大学生によるCornelius「夢中夢」全曲感想 ~火花の先に見える力強い姿~

 みなさんこんにちは、3度の飯よりdream, dream, dreaming of a sound、Lac-Qです。

6月28日にCorneliusの7thアルバム「夢中夢 -Dream In Dream」(以下、「夢中夢」)が発売されました。2021年のオリンピック騒動前後、活動再開後、その一つの「活動報告」になるようなアルバムだと思います。

私自身、Cornelius≒小山田圭吾さんの音楽は「The First Question Award」「69/96」「FANTASMA」などの初期を良く聞いていて、逆にそれ以降の作品はあまり聞いていませんでした。しかし「夢中夢」はそんな私にもスーッと染み込んでくるような心地の良さと暖かさがある作品だったなぁと思っています。「Point」なんかと比べると、良い意味で聴きやすい。「Corneliusってちょっと・・・」という人でも気持ちよく聞けると思います。例えるなら「ただそこにある流木」です(何言ってんだ笑、でもそんなイメージだったのです)。

そんな素直なtoo pureな感想をお届けできればと思います。アルバムの曲順に流れにも注目して書きますので是非お楽しみください!大学生風情が・・・と思うかもしれませんが、素敵だと思ったので恥を忍んで感想を書きます。

なお、Corneliusの活動についてラクラジオではこちらのようなスタンスで向き合っています。

(2023/07/12 誤字脱字を修正するとともに一部表現を改めました。)

目次
・素朴なシンガーソングライター”小山田圭吾”さんの姿
・夢の中へ、夢の中へ、引き込んで離さない
・まとめ

さっそく行ってみましょう!!あ、ちなみに「夢中夢」は「むちゅうむ」ですよ!私は「ゆめちゅうむ」ってしばらく読んで恥をかきました、顔から火花が散ったーーーー。

素朴なシンガーソングライター”小山田圭吾”さんの姿

ここからは1曲ずつ紹介しますので、気になった曲まで飛ばしていただいてもOKです!ハイフンの後は公式の英訳です。

M1 変わる消える – Change and Vanish

 この曲は元ゆらゆら帝国ボーカルの音楽家坂本慎太郎さんが作詞した曲になります。先行シングルの一つでもありましたね。他の方が作詞された曲も多いCorneliusの楽曲ですが、今回「夢中夢」の中で坂本さん作詞の曲は「変わる消える」のみになります。初めて聞いた時、「なんて素直なんだろう」と思いました。やっぱり私の感じていた騒動前の小山田さんの印象というのはやや無機質で冷たい、でも音楽に真摯な人、みたいな感じでした。Twitterでも公式サイトでも多くを語らないし・・・。しかし、この1曲を聴くだけで大きく印象が変わるのではないでしょうか。

「好きなものあるの? 好きな人いるの?」という優しい声はグッとアルバムの世界に引き込んでくれます。他のインタビューでも言及されていましたが、より直接的な表現が多いです。「The First Question Award」のようなやや乱暴な若いエネルギーとも、実験的で無機質な感じとも違い、目の前でただとつとつと語る小山田さんの姿が目に浮かびました。そして優しいんだ、これが。

M2 火花 – Sparks

 いやーーーー、かっこいい笑。そんな声が溢れるポップソングです。小山田さんが奏でるあの「パッ」という短いギターの音が好きなのですが、みなさんに伝わりますでしょうか。「Another Veiw Point」ととかにも入っているような細かい刻みの音です。歌詞がエモーショナルでとても聞いていて世界が広がる曲です。ギターの表現によって火花がパチっとなる感じ、パラパラと溢れていくような感じを受け取りました。サビのラストから間奏に入る部分でキューーーーっと気持ちが高まります。ちょっとポップ過ぎる?と思うぐらいの曲で、個人的にはノリノリで聞いています。

MVはこちら

M3 Too Pure

 1曲目で突如として現れた「人間:小山田圭吾」が森の中を歩いていくようなイメージを受けるインスト曲です。なんか鳥の声?みたいなのが私の中で森を連想させるんですよね。あとは霧。ずっとバックで鳴っているギターがてくてく歩くような。ここにも素朴さが生まれています。それでいてしっとりポップです。「火花」のあとの緩衝材のような役割があると思います。

M4 時間の外で – Out of Time

 時間をテーマにした浮遊感のある曲です。宇宙っぽいですかね。「時間も 未来も 過去も 消えていく」「今が過去で未来」など、時間の概念がぐちゃぐちゃになっていてその外側が表現されています。瞬く星のような音が入っていて、本当に「夢中」な感じです。曲が終わるにつれて、どんどん銀河から遠ざかっていくような。落ち着きます。

M5 環境と心理 – Environmental

 こちらは、METAFIVEとして発表された「環境と心理」のセルフカバーになります。全体的な雰囲気は原曲と共有しつつも「夢中夢」版「環境と心理」はより情熱的だけど身近な印象です。感情むき出し感?どうでしょうか笑。具体的には間奏のシンセの音、METAFAVE版では、ホーンのような音色ですが、「夢中夢」版は電子音っぽくて、歌声のトーンは他の曲と合わせる形で優しいです。また、歌もMETAFIVE版は前半を小山田さん、後半を高橋幸宏さんが担当していますが、「夢中夢」版はもちろん全パート小山田さんです。壮大な世界が広がるMETAFIVE版も好きですが、今回の「夢中夢」版も音の重なりはシンプルながらもメロディアスな部分は特に増していて好きです。

 ここまですでに非常に純粋にポップなアルバムであることがわかります。それはCINRAさんのインタビューにもある通り、「自分の内面と向き合う時期が長かった」ことが関係しているのだと思います。上記の私の感想はこのインタビューを読む前から抱いていた印象だったので、読ませていただいて納得感が強かったことを覚えています。

参照:Corneliusが語る、いま「諸行無常」と歌うのは。誕生と消滅、切れ目なく続く毎日、残された時間 – CINRA(https://www.cinra.net/article/202306-cornelius_ymmts

夢の中へ、夢の中へ、引き込んで離さない

M6 Night Heron

 再び、インスト曲です。「Night Heron」というのは日本語で「ゴイサギ」のことです。ゴイサギは夜行性のサギだそうです。この鳥について詳しくは以下を参照してみてください。

参照:ゴイサギ – サントリーの愛鳥活動(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1420.html

ゴイサギ感ありますかね?確かに夜っぽい雰囲気はあるように感じました。しかし、鳥をあからさまに表現してはいなさそうです。

この曲は「環境と心理」から打って変わって、後半の入り口になる曲です。より深い部分、「夢の中」に入っていく感覚になります。「夢中夢」に例えて言えば、夢の中のもう1段階中に入ったと言うところでしょうか。次曲との橋渡しとしての自然な繋ぎも演出していると思います。

M7 蜃気楼 – Mirage

 この曲も比較的静かながら、エネルギーを感じます。日常に当てはまるような内容が前半部分で歌われています。「現実」「毎日」など、地に足のついた単語ですよね。淡々と語るような歌い方が落ち着きます。そして、そこからの「蜃気楼」という言葉で、ぶわーっと毛穴が開き溶けていくような音に変化します。このギャップがハマるポイントですよね。溜めてからの解放感が良いです。

M8 Drifts

 「drifts」は歌詞と対応させると「漂う」という意味になると思います。短い言葉が並べられていく手法で曲の世界が展開されています。私はアルバムの中で一番、肝、押さえどころになる曲だなぁと感じました。シンプルながらも、いろいろな音が散りばめられていて、、、「蜃気楼」も「Night Heron」もそうですが、「夢」という雰囲気をとても自然に表現しています。「Drifts」はより「優しさ」、夢の包容力にフォーカスされている感じがして気持ちいいです。夢の中の暖かい浮遊感が伝わってきます。

M9 霧中夢 – Dream in the Mist

 約7分のインスト曲です。水の音、ぼわんと広がる音、鐘の音、説明不要でしたね笑。これ聴いてベッドに入ると良く寝れそう。というか、実際夜この曲で寝落ちしました。実質的なタイトルチューンにもあたるような、夢の総まとめですね。4分あたりで加速というか、ビデオの巻き直しのような音が入りますが、これは夢の中の夢、つまり「夢中夢」に入ったということなのでしょうか。お馴染みの「ポン」という音も好きです。

M10 無常の世界 – All Things Must Pass

 この「無常の世界」も「Drifts」と同じように短い単語、熟語が並べてリズムが作られている曲です。韻を踏んでいるというよりは、連想ゲームのように単語を並べている感じが自然な言葉の美しさを表現しているように感じています。諸行無常がまさしくテーマで、宇宙、人生など大きいものをイメージできる曲ですね。先ほど引用したインタビューでご本人も生死についても言及されています。諸行無常というのは万物は常に変化していくということを意味する仏教の言葉です。このことから、近年の小山田さんの状況を表すとともに私たち自身の近況も巻き込み、「諸行無常」の世界が作られていると思います。そしてアルバムの最後に配置するにあたり、まさしく流転していく様を表しているのではないでしょうか。

MVはこちら

 後半は夢の第二段階に入り、より深層のCorneliusが見えたような気がしました。前半でグッと引き込み、後半で深い眠りにつかせるというのはアルバム全体の物語としてとても有意義な体験であると思います。特に「霧中夢」なんかはアルバムの中で聞くことが「霧中夢」の魅力を理解するあたりで重要になってくると思います。

まとめ

・ポップで素朴で、そんな小山田圭吾さんの「環境と心理」が見えてくる前半がかっこいい

・夢の中へ入り込み、いっそう深い音楽体験を提供する後半にうっとり

・全体を通じて、夢、無常、宇宙などを体現した物語的な面白さが素敵

こんなところでしょうか。大学生の若造が感想を述べるなんておこがましい限りなのですが、とても好きになれたアルバムだったので感想を書かせていただきました。後半はよりひとそれぞれの感じ方が生まれるアルバムだと思います。

Corneliusをこれまで聞いてこなかった人に紹介するときにもおすすめしたいアルバムです。「火花」なんかはいつ聞いても盛り上がると思うけどなぁ。

9月30日からはアルバムを引っ提げた「Cornelius 夢中夢 Tour 2023」が始まるCornelius、再び回り始めた惑星はどんな夢を見せてくれるのか、とても楽しみです!!・・・仙台でライブやらないのがちょっと残念笑。(Lac-Q)

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